【中古】東海道中膝栗毛 上/岩波書店/十返舎一九(文庫)
東海道中膝栗毛(上)を改めて読む
「東海道中膝栗毛」。その名を知らぬ日本人はいない、と言っても過言ではないでしょう。今回のレビュー対象は岩波書店の文庫版、中古で購入した一冊です。長らく積読状態にあったのですが、この機会に改めて読んでみて、改めてその魅力を再確認しました。
軽妙洒脱な語り口と、時代を超越するユーモア
まず最初に心を奪われたのは、十返舎一九の軽妙洒脱な語り口です。現代語訳とはいえ、文章全体から漂うユーモアのセンスは、実に鮮やかです。弥次郎兵衛と喜多八の二人の旅の道中は、決して順風満帆ではありません。様々な困難やハプニングに見舞われますが、その度に二人は持ち前の機転と明るさで乗り越えていくのです。彼らの反応、そしてそれを彩る周囲の人々の言動、全てが絶妙なバランスで配置されており、読んでいて飽きることがありません。特に、現代社会においても通じる人間模様の描写は、時代を超越した普遍性を感じさせます。例えば、旅籠での出来事や、出会う人々とのやり取りなどは、現代の私たちにも共感できる部分が多く、むしろ現代社会の縮図を見ているようでした。
緻密な描写と、時代背景への考察
単なる滑稽話として片付けるには、あまりにも緻密な描写が随所に散りばめられています。当時の東海道の様子、人々の生活、風俗、文化などが細やかに描かれており、あたかも自分が一緒に旅をしているかのような錯覚に陥るほどです。例えば、街道沿いの風景描写や、食事に関する記述は、当時の生活水準や食文化を垣間見ることができ、歴史資料としても非常に価値が高いと感じました。この文庫版では、巻末に解説や注釈も付されているため、当時の社会情勢や歴史的背景を理解する上で非常に役立ちました。特に、注釈によって、現代では理解しづらい言葉や表現もスムーズに理解できるようになっている点が素晴らしかったです。
旅の楽しさと、人間模様の深み
この作品の魅力は、単なる旅の記録ではないところにあります。弥次郎兵衛と喜多八の二人の関係性、そして彼らが旅の途中で出会う人々との交流を通して、人間の温かさや深みを感じることができるのです。彼らの会話から垣間見える、友情、愛情、そして人間の業といった様々な感情は、読者に深い感動を与えます。また、二人の旅は、単なる物理的な移動ではなく、精神的な成長や変化の過程でもあります。困難を乗り越える中で、彼らは成長し、人間として成熟していく姿が描かれている点も、この作品が長く読み継がれてきた理由の一つでしょう。
文庫版としての利便性と、中古ならではの味わい
岩波書店の文庫版は、文字サイズもちょうど良く、読みやすいです。携行にも便利なので、電車の中などでも気軽に読むことができます。今回は中古で購入しましたが、前の持ち主の愛読書であったのか、少し書き込みがあったり、ページの角が少し折れていたりする箇所もありました。しかし、それが逆にこの本に歴史と味を与えているように感じました。新品とは違う、独特の温もりを感じることができました。
まとめ
「東海道中膝栗毛」上巻。改めて読んで、その魅力を再確認しました。軽妙な語り口、緻密な描写、そして時代を超越したユーモア。これは単なる古典落語ではなく、歴史小説、そして人間ドラマとしても非常に優れた作品です。もし未読の方は、ぜひ一度手に取ってみてください。そして、中古本ならではの味わいを求める方にも、この岩波文庫版はおすすめです。下巻を読むのが今から楽しみです。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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