【中古】花と悪魔 第10巻 /白泉社/音久無(コミック) 感想レビュー
白泉社の「花と悪魔」第10巻。音久無先生の紡ぎ出す、切なくも温かい物語の最新刊に触れることができた喜びはひとしおです。今回も、異形の君主である「悪魔」ハルと、彼に囚われることになった少女「花」の、禁断の愛とも言うべき関係性が、さらに深く描かれています。
異形の君主と少女の、歪んで、しかし純粋な愛
第10巻では、ハルと花の絆が、より一層強固になっていく様子が描かれます。ハルが花を愛おしく思う気持ちは、独占欲や支配欲という歪んだ形で表れることもありますが、その根底には、他者との関わりを持たなかったハルにとって、花だけが唯一の救いであり、希望の光であるという、純粋な感情があるのです。対する花も、当初は恐れおののきながらも、ハルの内に秘められた優しさや孤独に触れ、次第に心を開いていきます。その過程は、決して安易なものではなく、互いの内面と向き合い、葛藤しながら築き上げられる、繊細で危うい関係性として丁寧に描かれています。
ハルの孤独と、花がもたらす変化
ハルは、その恐ろしい姿ゆえに、人々に忌み嫌われ、孤独の中で生きてきました。彼の心には、深い悲しみと、誰かに理解してもらいたいという切実な願いが渦巻いています。そんなハルにとって、花は初めて自分を恐れることなく、まっすぐに向き合ってくれた存在でした。花との出会いは、ハルの凍てついた心に、一筋の温かい光を差し込ませ、彼を変えていくきっかけとなります。花が、ハルの恐ろしい外見に隠された、繊細で傷つきやすい内面に気づき、それを愛おしく思うようになる展開は、読者の心を強く打ちます。
花の成長と、ハルへの依存
一方、花もまた、ハルとの生活の中で大きく成長していきます。最初は、ただただ恐ろしい存在だったハルに、徐々に心を開き、彼なしではいられないという感情を抱くようになります。それは、単なる依存という言葉では片付けられない、深い愛情と信頼に基づいたものでしょう。ハルが花を外界から隔離することで、彼女を守ろうとする行動は、過保護とも言えますが、その行動の裏には、花を失うことへの極度の恐怖と、彼女を守り抜きたいという強い意志があります。花が、ハルの過保護な愛情を受け止めつつ、自分自身の意思も持ち始める様子は、今後の展開を期待させます。
第10巻における、新たな展開と伏線
第10巻では、これまでの物語の積み重ねを経て、物語がさらに大きく動き出す予感を感じさせます。ハルと花の絆は深まる一方で、彼らを取り巻く環境には、新たな波乱の兆しが見え隠れします。特に、ハルの過去や、彼を取り巻く悪魔たちの存在、そして花がハルに惹かれる本当の理由など、未だ明かされていない謎が、読者の興味を掻き立てます。これらの伏線が、今後の物語でどのように回収されていくのか、非常に楽しみです。また、登場人物たちの心情描写も、より一層深みを増しており、彼らの苦悩や喜びが、読者にリアルに伝わってきます。
脇を固めるキャラクターたちの存在感
「花と悪魔」の魅力は、ハルと花の関係性だけにとどまりません。彼らを取り巻く、個性豊かで魅力的な脇役たちも、物語に深みを与えています。彼らが、ハルと花の運命にどのように関わっていくのか、その動向も注目すべき点です。彼らの存在が、ハルと花の関係性をより複雑にし、物語に奥行きを与えています。
まとめ
「花と悪魔」第10巻は、切なくも美しい愛の物語の、さらなる深化と、今後の展開への期待感を高める、見どころ満載の一冊でした。ハルと花の、歪んで、しかし純粋な愛の行方から目が離せません。彼らの関係性が、これからどのような結末を迎えるのか、読めば読むほどに引き込まれる、音久無先生の才能が光る作品です。未読の方には、ぜひこの世界に触れていただきたいですし、既刊をお持ちの方には、迷わず手に取っていただきたい、そんな感動と興奮を味わえる巻でした。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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