【中古】吸血鬼すぐ死ぬ 1/秋田書店/盆ノ木至（コミック）

【中古】吸血鬼すぐ死ぬ 1/秋田書店/盆ノ木至（コミック） 感想レビュー

　「吸血鬼すぐ死ぬ」の第1巻、中古で手に入れました。この作品、とにかくぶっ飛んでる。まず、主人公のドラルクが「すぐ死ぬ」。文字通り、ちょっとしたことでバタバタと死んでしまう。しかも、再生能力が異常に高いから、死んでもすぐに蘇る。この「すぐ死ぬ」という設定が、物語の根幹であり、最大のギャグ要素になっているのが見事です。

　舞台は、吸血鬼であるドラルクが、なぜか人間であるロナルドの事務所に居候するところから始まります。ロナルドは吸血鬼退治屋という設定なのですが、ドラルクは「すぐ死ぬ」せいで、退治されるどころか、むしろロナルドに世話を焼かせる始末。この、本来敵対すべき二人が、奇妙な共同生活を送る様子が、とにかくおかしくて、笑わずにはいられません。

キャラクターの魅力

　登場人物一人ひとりが、強烈な個性と愛らしさを持っています。ドラルクの、ちょっぴりナルシストで、しかしどこか憎めないキャラクターは、この作品の顔と言えるでしょう。彼の「すぐ死ぬ」様を、読者は何度でも笑ってしまいます。そして、真面目なのか不真面目なのか、掴みどころのない性格のロナルド。彼のツッコミ役としての才能も光ります。彼ら二人の掛け合いは、この漫画の大きな魅力です。

　脇を固めるキャラクターたちも、個性的で魅力的です。ドラルクの執事であるジョン。彼は、なんとジョン（ジョン＝鳥）なのですが、その忠誠心と、時折見せる人間らしい感情が、読者の心を掴みます。また、ドラルクの旧友であるヒヨシ。彼の飄々とした雰囲気も、独特の味を出しています。そして、ロナルドのライバルであり、かつてはドラルクとも因縁があったであろう、ショット。彼の登場も、物語に奥行きを与えています。

独特の世界観とギャグセンス

　「吸血鬼すぐ死ぬ」の世界観は、非常に独特で、シュールなギャグが満載です。吸血鬼なのに、弱くてすぐ死んでしまうという設定自体が、まず奇抜。さらに、そこから生まれる数々の「あるある」ネタや、時事ネタ、パロディなどが、読者を飽きさせません。特に、ドラルクの「ちょろい」死に様や、ロナルドがそれにいちいち反応する様は、何度見ても笑ってしまいます。

　ギャグのテンポも良く、次から次へと繰り出されるボケに、思わず吹き出してしまいます。しかし、単なるギャグ漫画にとどまらず、時折、キャラクターたちの過去や、吸血鬼という存在について、少しだけ踏み込んだ描写があるのも、この作品の深みと言えるでしょう。そのバランス感覚が絶妙で、読後感も悪くありません。

絵柄の可愛らしさ

　盆ノ木至先生の絵柄も、この作品の魅力を引き立てています。キャラクターたちは、デフォルメされた可愛らしいデザインで描かれており、それでいて、感情の機微もしっかりと表現されています。特に、ドラルクの表情の豊かさは、彼の「すぐ死ぬ」様をより一層際立たせています。線画も丁寧で、ページをめくるたびに、その世界観に引き込まれます。

　背景の描き込みも細かく、キャラクターたちの行動や、周囲の状況を的確に描写しています。しかし、ごちゃごちゃしすぎることはなく、あくまでキャラクターが際立つように計算されているのが分かります。この、可愛らしい絵柄と、ぶっ飛んだ内容のギャップも、また面白いところです。

まとめ

　「吸血鬼すぐ死ぬ」第1巻は、強烈な個性のキャラクター、独特でシュールな世界観、そして中毒性の高いギャグが詰まった、まさに「買って損なし」の作品です。中古で手に入れたということもあり、多少の経年劣化はありましたが、内容の面白さは全く損なわれていませんでした。笑って、そして少しだけ切なくなるような、不思議な読後感があります。忙しい日常から一時的に解放されたい、思いっきり笑いたい、そんな時にぴったりの一冊です。この後も、キャラクターたちがどのように活躍していくのか、続きが非常に楽しみになりました。

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