【中古】推しが武道館いってくれたら死ぬ 3 /徳間書店/平尾アウリ(コミック) 感想レビュー
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」3巻。前巻からの怒涛の展開を受け、さらに深まるオタクたちの愛と、アイドルたちの成長が描かれた一冊。中古品として手元に届いたこの本は、ページをめくるたびに、あの熱気と感動が蘇ってくるようで、何度読んでも色褪せない魅力を放っています。
ライブシーンの圧倒的な熱量
まず、この巻で特筆すべきは、ライブシーンの圧倒的な熱量です。円盤化もされていない、伝説のライブ。その場の空気感、ファン一人ひとりの高揚感、そしてステージ上のアイドルたちの輝きが、平尾アウリ先生の繊細かつ力強い筆致によって、紙面から溢れ出してくるかのようです。特に、主人公・えがおの推しである「 LDH」のメンバー、ゆめ莉がステージで放つオーラは、読んでいるこちらまで胸が熱くなるほど。彼女の成長、そしてファンへの感謝の気持ちが、歌声やパフォーマンスを通してひしひしと伝わってきます。
このライブシーンを読んでいると、自分がまるで会場にいるかのような錯覚に陥ります。ペンライトを振り、コールを叫び、推しの名前を連呼する。そんなオタクの行動様式が、非常にリアルに、そして愛情深く描かれているのです。えがおの「推しが武道館に…!」という叫びは、単なる熱狂的なファン心理の表れというだけでなく、彼女がどれだけこの瞬間を待ち望んでいたか、そしてそれがどれだけ尊いことか、ということを象徴しています。
アイドルたちの葛藤と成長
一方で、アイドルたちの内面も深く掘り下げられています。特に、ゆめ莉の抱える葛藤は、この巻の大きなテーマの一つと言えるでしょう。人気が出れば出るほど、ファンの期待に応えなければならないというプレッシャー。そして、自分自身が本当にやりたいこととの狭間で揺れ動く姿が、痛々しいほどにリアルに描かれています。しかし、彼女は決して立ち止まることなく、ファンとの絆を力に変え、一歩ずつ成長していくのです。
また、他のメンバーたちの個性も光ります。それぞれのファンへの向き合い方、グループ内での立ち位置。それらが、ライブシーンや日常のやり取りを通して、より鮮明に浮かび上がってきます。彼女たちが抱える悩みや喜びが、読者である私たちにも共感をもって受け止められるのは、平尾先生がキャラクター一人ひとりを丁寧に描き込んでいる証拠でしょう。彼女たちの人間味あふれる姿が、LDHというグループの魅力を一層引き立てています。
オタクたちの多様な愛の形
この作品の魅力は、何と言っても、多様なオタクたちの姿をユーモラスかつ愛情深く描いている点にあります。えがおはもちろんのこと、彼女を取り巻くオタク仲間たち、そして個性豊かな「 LDH」のファンたちが、それぞれの「推し」への愛を様々な形で表現しています。彼らの純粋で、時に暴走しがちな愛情表現は、見ているだけで笑顔になってしまうものばかりです。
特に、えがおの「推しへの貢ぎ方」や、ライブ会場での「マナー」といった、リアルなオタク文化に根差した描写は、共感を呼ぶと同時に、その熱狂ぶりには思わず笑ってしまいます。しかし、その根底には、推しを全力で応援したいという、純粋でひたむきな気持ちがあるのです。この巻でも、そんなオタクたちの愛の深さと、それがアイドルたちにとってどれだけ大きな力になっているかが、温かい視点で描かれています。
伏線と今後の展開への期待
3巻は、これまでの物語の伏線を回収しつつ、さらに大きな展開への期待感を抱かせる内容となっています。特に、あるメンバーの過去に触れる描写は、今後の物語にどのように影響していくのか、非常に気になるところです。また、えがおと推しの関係性も、少しずつ変化の兆しを見せ始めており、今後の展開がますます楽しみになります。
平尾先生の描くストーリーは、単なるアイドル漫画に留まらず、人間ドラマとしても非常に奥深いものがあります。キャラクターたちの心情の変化、人間関係の機微が丁寧に描かれているため、読者は感情移入しやすく、物語の世界に深く入り込むことができます。この3巻も、そんな魅力が凝縮されており、次巻への期待を大きく膨らませてくれる一冊でした。
まとめ
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」3巻は、ライブシーンの熱量、アイドルたちの葛藤と成長、そしてオタクたちの多様な愛の形が、平尾アウリ先生の卓越した筆致によって見事に描き出された傑作です。中古品であっても、その魅力は全く損なわれていません。オタクである人も、そうでない人も、きっとこの作品から、熱い感動と温かい共感を得られるはずです。推しへの愛は、世界を救う。そんなメッセージが、この巻からも力強く伝わってきました。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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