【中古】 水曜日のシネマ 1 / 野原 多央 / 講談社 [コミック]【メール便送料無料】

【中古】 水曜日のシネマ 1 / 野原 多央 / 講談社 [コミック]【メール便送料無料】

「水曜日のシネマ」1巻：ノスタルジックな映画愛と青春の交錯

講談社から刊行された野原多央先生の「水曜日のシネマ」第1巻。古本屋で見つけたこの一冊に、私はすっかり心を奪われました。古びた表紙をめくると、そこには懐かしくも瑞々しい青春の物語が広がっていたのです。映画への深い愛情と、思春期特有の繊細な感情が織りなす世界観は、読めば読むほど味わい深く、心に染み入ってきます。

静かな日常に舞い降りた、映画という名の魔法

物語の舞台は、とある地方都市。主人公は、人見知りで内気な高校生、佐伯海（さえき かい）。彼は、クラスでも目立たない存在で、唯一の心の支えは、祖父が営む古い映画館「シネマ・ルナ」でした。しかし、その映画館も経営難に陥り、閉館の危機に瀕していました。そんな海のもとに、ある日、元気で明るい転校生、西條灯（さいじょう あかり）が現れます。灯は、都会から来たというだけあって、海とは正反対の、社交的で活発な少女でした。

灯は、海が大切にしている映画館の存在を知り、興味津々。持ち前の明るさで、海を映画の魅力に引き込んでいきます。二人が一緒に映画を観たり、昔のフィルムを眺めたりするうちに、海は少しずつ心を開いていきます。灯は、海にとって、閉ざされていた世界への扉を開けてくれる、まさに「シネマ・ルナ」に灯りをともすような存在でした。

映画への愛が、青春の輝きを増幅させる

この作品の魅力は、何といっても映画への深い愛情が随所に感じられる点です。野原先生の描く映画へのリスペクトは、単なる小道具としてではなく、物語の核として息づいています。作中には、古今東西の名作映画へのオマージュが散りばめられており、映画ファンならばニヤリとさせられることでしょう。

海が灯に語る映画の知識、灯が海に教える新しい視点。二人の会話を通して、読者もまた、映画の奥深さや楽しさを再発見することができます。古いフィルムが映し出す光、モノクロームの世界、そしてスクリーンから溢れ出る感動。それらは、青春という限られた時間の中で、かけがえのない思い出となっていくのです。

繊細な心情描写と、淡い恋の予感

「水曜日のシネマ」は、単なる映画紹介漫画ではありません。海の内気さ、灯の明るさ、そして二人の間に芽生える淡い恋の予感。思春期特有の、言葉にならない繊細な心情が丁寧に描かれています。

海が灯に対して抱く、戸惑いとときめき。灯が海に対して見せる、優しさと好奇心。それらが、映画という共通の趣味を通じて、ゆっくりと、しかし確実に育まれていく様子は、読者の胸をキュンとさせます。特に、海が灯のために、映画のセリフを引用して自分の気持ちを伝えようとするシーンは、まさに青春そのもの。不器用ながらも、一生懸命に愛情を伝えようとする姿に、思わず応援したくなります。

閉館の危機と、再生への希望

物語の根底には、「シネマ・ルナ」の閉館という、切ない現実があります。しかし、灯の登場によって、その状況は少しずつ変化していきます。灯は、海と一緒に、映画館を盛り上げるための企画を考え始めます。昔ながらの映画上映だけでなく、新しい試みを取り入れることで、失われつつあった映画館に再び活気を取り戻そうとするのです。

その過程で、海は内に秘めていた情熱を解き放ち、灯と共に困難に立ち向かっていきます。映画への愛が、二人の成長を促し、閉館の危機という壁を乗り越える力になっていくのです。この物語は、単なる青春ドラマに留まらず、失われゆく文化を守ろうとする人々の姿を描いており、現代社会へのメッセージ性も感じさせます。

まとめ：心温まる、ノスタルジックな読書体験

「水曜日のシネマ」1巻は、映画への愛情、青春の輝き、そして淡い恋の予感が絶妙にブレンドされた、心温まる作品です。野原多央先生の描く、どこか懐かしく、それでいて新しい世界観に、きっとあなたも魅了されることでしょう。

古びた映画館のロマン、スクリーンに映し出される夢、そして思春期の少年少女の瑞々しい感情。それらが織りなす物語は、読後も心に温かい余韻を残します。映画好きな方はもちろん、青春の甘酸っぱさを味わいたい方にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。この作品との出会いは、まさに、古本屋で掘り出した、年代物のフィルムのような、かけがえのない宝物になるはずです。

上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください