エイティエイトを2でわって 1 (まんがタイムKRコミックス) [ 有馬 ]

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エイティエイトを2でわって 1 (まんがタイムKRコミックス) [ 有馬 ]

エイティエイトを2でわって 1 (まんがタイムKRコミックス) [ 有馬 ]

「エイティエイトを2で割って」1巻:日常に潜む切なさと温かさ

日々アップされるコミック情報の中で、今回注目したいのは「エイティエイトを2で割って」1巻(まんがタイムKRコミックス)です。有馬先生が描くこの作品は、一見すると穏やかな日常を描いているようで、その奥底には静かな切なさと、じんわりと広がる温かさが宿っています。

静かな日常の断片

物語は、主人公である高校生の「ハチ」(八重樫ハナ)と、彼女を取り巻く友人たち、そして家族との何気ない日々を切り取っています。ハチはどこか掴みどころがなく、独特な感性を持つ少女です。彼女が日常の中で感じる些細な出来事、友人との会話、家族とのやり取りが、淡々と、しかし丁寧に描かれていきます。

特に印象的なのは、ハチのモノローグです。彼女の頭の中では、時折、現実とは少しずれたような、詩的な言葉が紡がれます。それは、彼女が物事をどのように捉え、感じているのかを垣間見せてくれます。例えば、「空が泣いているみたい」とか、「風が秘密を運んできそう」といった表現は、彼女の繊細な感受性を表しているかのようです。

友情の形

ハチの周りには、個性豊かな友人たちがいます。それぞれのキャラクターが、ハチとの関わりの中で、様々な表情を見せてくれます。友情といっても、熱く語り合うようなものではなく、もっと静かで、互いの存在を当たり前のように受け入れているような関係性です。

「普通」であることが難しいように感じるハチですが、友人たちはそんな彼女を否定せず、自然に受け入れています。そこには、深い理解や共感があるわけではないかもしれませんが、ただそこにいること、一緒に時間を過ごすことの心地よさが描かれています。これは、現代社会において、希薄になりがちな人間関係の中で、大切なものを示唆しているように思えます。

家族との距離感

ハチの家族との関係性も、この作品の大きな魅力の一つです。特に母親とのやり取りは、親子でありながらも、どこか友人のような、あるいは他人行儀のような距離感を感じさせます。しかし、その距離感の中に、互いを思いやる気持ちが確かに存在していることが、さりげない言動から伝わってきます。

例えば、母親がハチの部屋を覗きに来て、特に何も言わずに部屋を出ていくシーン。そこに、過干渉ではなく、見守るような愛情が感じられます。また、ハチが母親の些細な行動に心の中で反応する様子は、普段は言葉にしない、でも確かに繋がっている親子の絆を表しているようです。

言葉にならない想い

この作品の根底に流れているのは、言葉にできない、あるいは言葉にしても伝えきれない、人々の秘めた想いです。ハチ自身も、自分の感情や考えをうまく言葉にできないことがあります。それが、彼女の周りの人々との関係性にも影響を与え、独特の雰囲気を醸し出しています。

しかし、そうした言葉にならない想いが、逆に読者の想像力を掻き立てます。登場人物たちの表情、仕草、そして彼らが置かれている状況から、それぞれの内面を読み取ろうとします。それが、この作品の静かな感動を生み出しているのではないでしょうか。

絵柄の魅力

有馬先生の絵柄も、この作品の雰囲気にぴったりです。シンプルでありながらも、キャラクターの表情や感情を繊細に描き出しています。特に、ハチの少し憂いを帯びたような表情や、友人たちの自然な仕草は、読者の心にすっと入り込んできます。余白を活かしたコマ割りも、物語の静かなテンポを強調し、読者にゆったりとした読書体験を提供してくれます。

まとめ:日常にそっと寄り添う感性

「エイティエイトを2で割って」1巻は、派手な展開や劇的な出来事はありません。しかし、だからこそ、私たちの日常にそっと寄り添ってくれるような作品だと感じました。ハチという一人の少女を通して、友情、家族、そして自分自身と向き合うことの尊さが描かれています。

この作品を読むと、普段見過ごしてしまいがちな日常の些細な光景が、かけがえのないものであることに気づかされます。そして、登場人物たちの静かな感情の揺れ動きに触れることで、自身の心にも温かいものが灯るような感覚を覚えます。

「エイティエイトを2で割って」は、心に静かな波紋を広げたい、そんな読者におすすめしたい一冊です。今後の展開も、ハチがどんな「数式」で日常を解き明かしていくのか、楽しみでなりません。

上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください

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