【中古】ようかい居酒屋のんべれケ。 5/講談社/nonco(コミック)
【中古】ようかい居酒屋のんべれケ。 5/講談社/nonco(コミック) 感想レビュー
「ようかい居酒屋のんべれケ。」シリーズもいよいよ5巻! 中古ながらも、この作品との出会いを心待ちにしていた読者の一人として、今回も存分にその魅力を堪能させていただきました。nonco先生の描く、個性豊かな妖怪たちが織りなす日常と、そこに温かな肴と酒を提供する居酒屋「のんべれケ」。この5巻も、期待を裏切らない、心温まる、そしてちょっぴり切ない、そんな一杯が提供されています。
妖怪たちの個性と人間ドラマの絶妙な融合
本作の最大の魅力は、やはりnonco先生が生み出す、愛すべき妖怪たちのキャラクター造形でしょう。5巻でも、新たに登場する妖怪たち、そして既存の妖怪たちの掘り下げが巧みに描かれています。彼らは決して恐ろしい存在ではなく、人間と同じように悩み、喜び、そして時には寂しさを抱えています。
例えば、今回特に印象的だったのは、ある妖怪が抱える過去の出来事と、それによって現在の彼がどのように影響を受けているのか、というエピソードです。その妖怪が抱えるトラウマや後悔が、居酒屋での他愛ない会話や、店主である人間・ハルとのやり取りを通じて、徐々に明らかになっていきます。nonco先生は、そういった妖怪たちの内面を、決して重くなりすぎないように、しかししっかりと読者の心に響くように描くのが本当に上手い。彼らの抱える事情を知ることで、読者は単なる「妖怪」としてではなく、一人の「存在」として彼らに感情移入し、応援したくなるのです。
そして、そんな妖怪たちと温かく接するハルの存在も、この作品には欠かせません。ハルは、妖怪たちの秘密や悩みを理解し、受け入れ、ただ静かに彼らの話を聞き、美味しい料理と酒を提供します。彼女の包容力と、誰に対しても分け隔てなく接する優しさが、「のんべれケ」という空間を、訪れる者すべてにとって安らぎの場所たらしめているのだと感じました。人間と妖怪、異種間の交流が、こんなにも自然に、そして温かく描かれている作品はそう多くないのではないでしょうか。
食欲をそそる描写と、一杯の酒に込められた物語
「ようかい居酒屋のんべれケ。」というタイトルが示す通り、この作品には美味しい料理とお酒の描写が溢れています。5巻でも、各話で登場する妖怪たちの悩みに合わせた、あるいは彼らの好みに合わせた、様々なメニューが登場しました。
例えば、ある妖怪が過去の失恋を乗り越えるために注文する料理、また別の妖怪が大切な人との再会を願って注文するお酒。それらの描写は、単なる食べ物や飲み物の説明に留まらず、そこに込められた妖怪たちの想いや、物語の背景を巧みに表現しています。読んでいるだけで、まるで自分も「のんべれケ」のカウンターに座って、その料理やお酒を味わっているかのような錯覚に陥ります。
特に、あるエピソードで描かれた、とある妖怪が故郷の味を求めて注文する料理の描写は秀逸でした。その料理一つ一つに、彼が故郷で過ごした温かい日々や、家族との思い出が凝縮されているかのように感じられました。そして、それを一口食べた時の妖怪の表情の変化…。言葉にならない感動が、静かに心に広がっていくのを感じました。nonco先生の絵と文章は、五感を刺激し、読者の感情を豊かに揺さぶります。
シリーズを通してのテーマと、次巻への期待
5巻を読み終えて改めて感じるのは、このシリーズが単なる妖怪たちの日常を描くだけではなく、「孤独」「繋がり」「赦し」「再生」といった、普遍的なテーマを静かに、しかし力強く描いているという点です。妖怪たちは、人間社会から隔絶された存在として描かれることもありますが、「のんべれケ」という空間でハルや他の妖怪たちと交流することで、彼らは孤独を癒し、新たな繋がりを見出していきます。
そして、過去の過ちや辛い経験を抱える妖怪たちも、ハルの温かいもてなしや、仲間との触れ合いを通じて、少しずつ自分自身を赦し、前を向いて生きていく勇気を得ていきます。それは、私たち人間が抱える悩みにも通じるものがあり、読者は共感し、励まされるのではないでしょうか。
5巻も、読後には温かい余韻と、少しの切なさが残りました。しかし、それ以上に、登場するキャラクターたちの健気さや、人間と妖怪の垣根を越えた絆の温かさに、心が満たされるのを感じました。
さて、5巻で描かれたエピソードの結末は、読者に安堵感を与えつつも、まだ見ぬ彼らの未来に、そして「のんべれケ」の新たな物語に、期待を抱かせます。次巻では、一体どのような妖怪たちが訪れ、どのような物語が紡がれていくのか。nonco先生の描く世界に、これからも心を預けるのが楽しみでなりません。中古で手に入れられたこの5巻ですが、その価値は新品以上だと感じさせられました。次巻も、大切に読ませていただきます。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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