【中古】あしたのジョ- 2/コミックス/高森朝雄(文庫)

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【中古】あしたのジョ- 2/コミックス/高森朝雄(文庫)

【中古】あしたのジョー 2/コミックス/高森朝雄(文庫) 感想レビュー

不屈の魂、そして破滅への序曲

 今回レビューするのは、高森朝雄(原作)、ちばてつや(作画)による伝説的ボクシング漫画の文庫版、『あしたのジョー 2』である。

 『あしたのジョー』の第一部で、矢吹丈が「白木ジム」の刺客として、そして白髪鬼・丹下段平との運命的な出会いを経て、リングに上がっていく姿が描かれた。続く第二部では、丈はさらに過酷な運命に翻弄されながらも、不屈の闘志を燃やし続ける。この文庫版『あしたのジョー 2』は、まさにその丈の魂の輝きと、避けられぬ破滅への序曲を克明に描き出した一冊と言えるだろう。

 物語は、丈が「力石徹」との壮絶な試合で勝利を収めながらも、その代償として視力を失いかけるという、衝撃的な展開から幕を開ける。ボクサーにとって生命線とも言える視力を失う可能性。この絶望的な状況に、丈はどう立ち向かうのか。読者は、丈の苛烈な運命に息を呑み、その行く末を固唾を飲んで見守ることになる。

 しかし、ここで丈は諦めない。むしろ、その逆境が彼の闘志をさらに燃え上がらせるのだ。視力を失いかけた状態でのトレーニング、そして再びリングに立つための決意。この過程で描かれる丈の姿は、単なる根性論を超えた、人間が持つ極限の精神力を物語っている。ちばてつや氏による、汗と血が飛び散るような迫力ある描写は、丈の苦悩と葛藤を読者の五感に訴えかける。特に、視界がぼやけ、歪む中で必死にパンチを繰り出すシーンは、を読む者の心を締め付ける。

ライバルたちの激闘

 『あしたのジョー 2』では、丈の前に立ちはだかる強敵たちが次々と登場する。特に印象深いのは、「ハリマオ」「カーロス・リベラ」「サチ」「キン肉マングレート」といった個性豊かなライバルたちだ。彼らとの一戦一戦が、丈をさらに強く、そして同時に傷つけていく。

 中でも、カーロス・リベラとの対戦は、丈のボクシング人生における重要な転換点となる。リベラの華麗でトリッキーなボクシングスタイルは、丈の「まっすぐな」ボクシングとは対照的であり、丈はこれまで経験したことのない苦戦を強いられる。この試合を通して、丈は自身のボクシングスタイルを見つめ直し、さらなる成長を遂げる。リベラとの激闘は、単なる肉体的なぶつかり合いではなく、ボクシングという競技の奥深さと、それぞれのボクサーが持つ哲学のぶつかり合いとしても描かれている。

 そして、忘れてはならないのが、丈の師であり、父のような存在である丹下段平である。段平は、丈の才能を見抜き、彼をリングに引き上げた人物だが、同時に丈を破滅へと導く存在でもある。丈の勝利を誰よりも願いながらも、そのあまりにも情熱的すぎる指導が、丈の身体を蝕んでいく。この愛情と狂気の入り混じった関係性は、『あしたのジョー』という作品の根幹をなす要素であり、読者に深い感動と同時に、ある種の虚しさを感じさせる。

内面の葛藤と孤独

 『あしたのジョー 2』が単なるスポ根漫画に留まらないのは、丈の内面の葛藤と孤独を深く描いている点にある。リングの上での激闘だけではなく、リングを降りた丈の日常にも、彼は常に孤独と向き合っている。

 チャンピオンベルトを手にしても、彼の心は満たされない。なぜなら、彼が本当に求めているのは、勝利そのものではなく、自分自身を証明すること、そして誰かに認められることだからだ。しかし、その承認欲求が、彼をさらに過酷な戦いへと駆り立て、心身を削っていく。

 また、視力を失いかけるという身体的なハンデは、丈の精神にも大きな影響を与える。未来への不安、そしてボクシングができなくなるかもしれないという恐怖。その全てを一人で抱え込み、誰にも弱みを見せない丈の姿は、痛々しくも、彼の強さの証でもある。

 この文庫版は、当時の読者が抱いたであろう、丈への共感と、そのあまりにも過酷な運命への同情を、現代の読者にも鮮やかに蘇らせてくれる。古き良き時代の熱気と、普遍的な人間ドラマが凝縮された一冊だ。

まとめ

 『あしたのジョー 2』は、矢吹丈という一人のボクサーの、栄光と破滅、そして不屈の魂を描き出した傑作である。文庫版という手軽さで、この伝説的な物語に触れることができるのは、読書体験として非常に贅沢なことだ。

 ちばてつや氏の描く、躍動感あふれるキャラクター、そして緊迫感あふれる試合の描写は、何度読んでも色褪せない。高森朝雄氏の紡ぐ、力強くも哀愁漂うストーリーは、人間の業や運命について深く考えさせられる。

 【中古】という点も、この作品の持つ歴史的な重みを感じさせる。かつて多くの読者が熱狂したであろうこの物語が、今、新たな読者へと受け継がれていく。

 ボクシング漫画としてだけでなく、人間ドラマとしても、また青春群像劇としても、この『あしたのジョー 2』は、読む者の心に深く刻み込まれるであろう。情熱、友情、裏切り、そして孤独。人間の持つあらゆる感情が、リングの上で、そしてリングの外で、激しくぶつかり合う。

 まだ『あしたのジョー』を読んだことのない方、そしてかつて熱狂した読者の方々にも、この文庫版『あしたのジョー 2』は、強くお勧めしたい。読めば、きっとあなたの魂も、丈のように燃え上がるはずだ。

上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください

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