【中古】戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る/岩波書店/斎藤美奈子(文庫)
戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る レビュー
戦争と食卓、切実な記録
「中古」の文字が書かれたこの一冊、『戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る』は、想像以上に深く、そして痛切な読み応えのあるノンフィクションでした。著者の斎藤美奈子氏が、膨大な資料と聞き取り調査に基づいて描いた太平洋戦争下の食生活は、単なる食文化史にとどまらず、戦争の残酷さと人々の生き様を鮮やかに浮かび上がらせる、力強い一冊となっています。
想像を絶する食糧難
本書で最も衝撃を受けたのは、戦争が国民の食卓を、どれほどまでに奪っていったのかという事実です。米不足は想像をはるかに超え、芋や麦、雑穀が主食となり、時には樹皮や草根木皮を口にすることすらあったと記されています。現代の私たちが当たり前のように享受している食の豊かさは、決して当たり前のものではないということを、改めて痛感させられます。
工夫と知恵、そして諦観
しかし、本書は悲観的な記述ばかりではありません。限られた食料の中から、工夫と知恵を絞り出して、家族を養おうとした人々の姿が描かれている点も、大きな魅力です。貴重な栄養源となる工夫を凝らしたレシピの数々は、単なる料理ではなく、生き抜くための知恵の結晶として胸を打つものがあります。例えば、少量の米を最大限に活用するための調理法や、栄養価の高い野草を使った料理などは、現代の食生活にも通じるヒントが隠されているかもしれません。
軍と民衆の食卓のギャップ
本書は、軍部の食糧事情についても触れています。兵士たちの食糧事情も決して恵まれていたわけではありませんが、一般国民とは比較にならないほど恵まれていたという、あまり語られることのない事実にも光が当てられています。このギャップは、戦争の不条理さと、情報操作の巧妙さを改めて認識させられる一因となっています。
資料の豊富さと読みやすさ
多くの写真や資料が掲載されている点も、本書の魅力です。当時の食糧配給票や、レシピを記したノート、そして、戦争体験者の証言など、多角的な視点から、太平洋戦争下の食文化が克明に描かれています。文章も平易で読みやすく、専門的な知識がなくても十分に楽しむことができます。
現代社会への警鐘
本書は、単なる過去の出来事の記録ではありません。現代社会における食糧問題や、戦争の恐ろしさを改めて考えさせる、重要な一冊と言えるでしょう。食の豊かさを享受する私たちにとって、この本は、平和と食の大切さを再認識する機会を与えてくれるでしょう。そして、将来、予期せぬ困難に直面した時、先人たちの知恵と工夫を学ぶための貴重な資料となるはずです。
まとめ
『戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る』は、戦争と食卓という切り口から、太平洋戦争の実相を深く理解させてくれる優れたノンフィクションです。単なる歴史書としてだけでなく、現代社会を考えるための重要な一冊として、強くおすすめしたい一冊です。特に、食に関心のある方、歴史に興味のある方、そして、戦争の悲劇を二度と繰り返さないことを願う全ての方々に、本書を手にとって頂きたいと願っています。
最後に
中古とはいえ、この本の価値は全く損なわれていません。むしろ、歴史の重みを感じさせる「中古」という文字が、この本が伝えるメッセージをより深く心に響かせるものとなっていると感じています。 多くの人に読んでもらいたい、そんな一冊です。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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