新装版 もやしもん 3 (KCDX) 感想レビュー
石川雅之先生による『新装版 もやしもん』第3巻は、前巻から続く「長谷川流」の奮闘と、新たなキャラクター、そして「菌」たちの愛らしい(そして時に恐ろしい)世界観がさらに深化していく様が描かれています。この巻では、前巻で紹介された「長谷川流」が、自身の才能と、それ故に抱える葛藤に直面します。彼が微生物学の世界でどのように成長していくのか、その過程が丁寧に、そしてユーモラスに描かれており、読者は彼の歩みから目が離せません。
長谷川流の苦悩と成長
「長谷川流」は、その卓越した「菌」を見る能力ゆえに、周囲から孤立しがちな一面も持ち合わせています。しかし、この巻では、その能力を肯定的に捉え、さらに発展させていこうとする意志が芽生えます。特に、彼が特定の「菌」に対して抱く感情や、それらを理解しようとする姿勢は、単なる科学者としての興味を超えた、人間的な深みを感じさせます。彼が経験する失敗や挫折は、読者にも共感を呼び起こし、彼の成長を心から応援したくなる衝動に駆られます。特に、ある特定の「菌」との出会いが、彼の学問への向き合い方を大きく変えるきっかけとなる描写は秀逸です。それは、単に知識を得るだけでなく、自然界の営みへの畏敬の念をも育むものであり、物語に深みを与えています。
新たなキャラクターとの出会い
第3巻で登場する新キャラクターたちも、物語に彩りを添えています。彼らは「長谷川流」にとって、新たな視点や刺激を与えてくれる存在となります。特に、彼が尊敬する先輩研究者や、個性豊かな同級生たちとの交流は、学術的な議論だけでなく、人間関係の機微をも描き出しており、読者を引き込みます。彼らが「菌」という共通のテーマを通して、どのように関わり合い、影響を与え合っていくのかは、この作品の大きな魅力の一つです。彼らの言葉一つ一つに、「菌」の世界への深い愛情と探求心が込められており、読者もまた、その世界に誘われるような感覚になります。特に、あるキャラクターが披露する「菌」にまつわるエピソードは、ユーモラスでありながらも、その存在の重要性を改めて認識させられます。
「菌」たちの愛らしさと奥深さ
「もやしもん」シリーズの最大の魅力である、「菌」たちの擬人化された描写は、この第3巻でも健在です。彼らが発する言葉や、その行動様式は、それぞれの「菌」の特性を巧みに表現しており、見ているだけで楽しくなります。しかし、単なる可愛らしさだけでなく、彼らが持つ「菌」としての生態や、人間社会との関わりについての説明は、非常に興味深く、教育的でもあります。この巻では、これまで以上に多様な「菌」が登場し、それぞれの「菌」が持つ物語や、それらが引き起こす現象が、コミカルかつ分かりやすく描かれています。例えば、ある「菌」が引き起こす発酵のメカニズムを、キャラクターの会話を通して理解できる部分は、まさに「もやしもん」ならではの醍醐味と言えるでしょう。
発酵の神秘
「発酵」というテーマは、この作品の根幹をなすものの一つですが、第3巻ではその神秘性がさらに掘り下げられています。単に食品を作る技術としてだけでなく、自然界の営み、そして人間の知恵が織りなす壮大なドラマとして描かれています。特に、「長谷川流」が「発酵」の現場で体験する感動や、その奥深さに触れる描写は、読者にも「菌」への新たな見方を与えてくれます。彼が、伝統的な「発酵」技術に触れ、そこに潜む「菌」たちの働きを肌で感じるシーンは、物語のハイライトの一つです。それは、最新の科学技術だけが全てではなく、古くから受け継がれてきた知恵の中にこそ、偉大な発見があることを示唆しています。
食文化への敬意
この巻を通して、石川雅之先生が日本の「食」や「発酵」文化に対して抱いている深い敬意と愛情がひしひしと伝わってきます。物語の随所に散りばめられた、食に関する知識やエピソードは、読者の食欲を刺激するだけでなく、私たちが普段何気なく口にしているものへの感謝の念を抱かせます。登場人物たちが、それぞれの「菌」と向き合い、そして「食」を大切にする姿勢は、現代社会において失われがちな、自然との共生や、伝統への敬意を改めて考えさせられます。
まとめ
『新装版 もやしもん』第3巻は、前巻からの連続性を保ちつつも、新たな展開とキャラクターの深化、そして「菌」たちの魅力がさらに増した、非常に満足度の高い一冊です。「長谷川流」の成長物語、個性豊かなキャラクターとの交流、そして「菌」たちの愛らしい描写と、その奥深い世界観。これら全てが調和し、読者を「菌」の世界へと引き込みます。科学、文化、そして人間ドラマが融合した本作は、何度読んでも新しい発見があり、その魅力は尽きることがありません。まだ「もやしもん」の世界に触れたことのない方にも、ぜひお勧めしたい巻です。
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