【中古】ちはやふる 33/講談社/末次由紀(コミック)
『ちはやふる』33巻:胸を焦がす熱気と、静かに燃える決意
末次由紀先生の傑作『ちはやふる』、待望の33巻の感想を綴らせていただきます。この巻は、競技かるたという過酷な世界で、主人公たちの成長と葛藤が色濃く描かれており、読んでいるこちらの心まで熱くなるような展開の連続でした。特に、全国大会という大舞台で、それぞれが抱える想いやプレッシャーが、キャラクターたちの言動の端々に現れていて、ページをめくる手が止まりませんでした。
新との関係性の深化と、千早の覚醒
なんといっても、今巻の主軸の一つは、綾瀬千早と綿谷新の関係性の更なる深化でしょう。新の病状、そしてそれゆえの引退の可能性という、千早にとって最も辛く、そして最も目を背けたくない現実。その事実が千早に与えた衝撃は計り知れません。しかし、千早はただ立ち尽くすのではなく、そこから新たな決意を固めるのです。新のために、そして自分自身のために、かるたを続けること。その覚悟が、彼女のプレイに、そして表情に、これまでにないような力強さをもたらしているように感じました。
特に印象的だったのは、千早がかるたに臨む際の「覚悟」の描写です。これまでは、かるたへの純粋な愛情や、仲間との絆を原動力に成長してきた千早ですが、33巻では、より個人的で、より切実な理由が彼女を突き動かしているのが分かります。それは、新という存在が、彼女にとってどれほど大きな意味を持っているのかを改めて思い知らされる瞬間でもありました。新がかるたから離れてしまうかもしれないという不安は、千早のかるたへの情熱を、さらに燃え上がらせる炎となったのです。
太一の葛藤と、友情の重み
そして、我らが真島太一。彼の抱える葛藤も、今巻ではより一層深く描かれています。千早への想いを胸に秘めながら、新という存在に複雑な感情を抱く太一。さらに、かるた部を支えるリーダーとしての責任感。そのすべてが、彼の心を締め付けます。しかし、太一は決して諦めません。千早のために、そしてかるた部のために、彼は前を向き続けるのです。
太一が千早にかける言葉、そして彼女を支えようとする姿は、まさに「友情」という言葉の重みを感じさせます。たとえ自分の気持ちが報われなくても、大切な人の幸せを願う。その健気さが、読者の胸を締め付けます。彼が抱える苦悩は、読者にも伝染し、応援したくなる気持ちを強くさせられました。また、太一がかるた部員たちと接する場面では、彼のリーダーシップと、部員たちからの信頼も垣間見え、瑞沢高校かるた部の絆の強さを再確認させてくれます。
ライバルたちの躍動と、大会の熱狂
もちろん、大会の熱狂も健在です。新や太一だけでなく、周防久志という圧倒的な強さを誇るライバルの存在感も際立っています。彼の無心で、しかし鬼気迫るようなプレイは、読者をも惹きつけ、かるたの奥深さ、そして難しさを改めて感じさせられました。
また、瑞沢高校かるた部の他のメンバーたちも、それぞれの持ち場で奮闘しています。肉まん、かなちゃん、筑波、そして大江。彼ら一人ひとりが、千早や太一と共に、この大舞台に立っているのです。彼らの成長もまた、『ちはやふる』という物語を豊かに彩る要素であり、彼らの活躍にも目を奪われました。特に、これまであまりスポットライトが当たらなかったキャラクターたちが、この大舞台で輝きを見せる場面は、読んでいて非常に嬉しくなります。
次巻への期待と、作品の普遍的な魅力
33巻は、キャラクターたちの感情の機微を丁寧に描きながら、競技かるたというスポーツの持つドラマを最大限に引き出している一冊だと感じました。それぞれのキャラクターが抱える「想い」が、かるたの札となって舞い、それが彼らの人生を大きく左右していく。その儚さ、そして力強さに、私はいつも心を揺さぶられます。
この巻を読み終えて、次巻で千早たちがどのような戦いを繰り広げるのか、そして新の運命はどうなるのか、期待せずにはいられません。瑞沢高校かるた部が、この困難をどう乗り越えていくのか、固唾を飲んで見守りたいと思います。『ちはやふる』は、単なる競技かるたの物語ではなく、青春の輝き、友情、愛情、そして困難に立ち向かう勇気といった、普遍的なテーマを描いた作品です。これからも、この素晴らしい物語の続きを追いかけていきたいと思います。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


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