【中古】「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか /講談社/中島義道(新書)

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【中古】「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか /講談社/中島義道(新書)

【中古】「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか /講談社/中島義道(新書)

「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか ~レビュー~

講談社現代新書から刊行されている中島義道氏の『「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか』の中古本を入手し、じっくりと読み終えました。哲学書、特に時間論というテーマは敷居が高いように感じますが、本書は驚くほど平易な言葉で、かつ巧みな比喩を用いて、難解な概念を分かりやすく解説しています。時間という誰もが経験するものの本質に迫ろうとする本書は、コミック読者、とりわけSFやファンタジー作品を好む読者にも、新たな視点と想像力を提供してくれるでしょう。

時間の不可逆性と人間の意識

本書の大きな魅力の一つは、時間の不可逆性、つまり時間が一方向にしか流れないという事実を、様々な角度から考察している点です。物理学的な説明から始まり、人間の意識、記憶、そして言葉との関わりまで、多角的なアプローチで時間の流れを解き明かしていきます。著者は、過去は消滅したのではなく、現在に痕跡として残っていると主張します。例えば、私たちの記憶や歴史、そして言葉は、過去の断片を現在に繋ぎ止めていると言えるでしょう。この視点からすると、過去は完全に失われたものではなく、現在を形作る重要な要素の一つと言えるのです。

時間の相対性と日常感覚

アインシュタインの相対性理論も、本書では分かりやすく解説されています。時間の絶対性という従来の概念を覆すこの理論は、時間というものが観測者によって異なるように流れることを示唆しています。しかし、著者は相対性理論を難解な数式で説明するのではなく、日常生活における時間の感覚と結びつけることで、読者の理解を助けています。例えば、待ち時間の長さや、楽しい時間は短く感じるといった経験は、時間の主観的な流れを示していると言えるでしょう。これらの日常的な感覚と、相対性理論を巧みに関連付けることで、抽象的な概念を身近なものに感じさせてくれます。

言葉と時間

特に興味深かったのは、言葉と時間との関係についての考察です。著者は、言葉が過去を現在に呼び起こす役割を果たしていると主張します。過去に起こった出来事を言葉で表現することで、私たちはそれを現在に蘇らせることができるのです。小説や歴史書、そして日常会話における言葉は、全て過去と現在を繋ぐ架け橋と言えるでしょう。この視点からすると、コミックという媒体自体も、過去を現在に繋ぐ一つの手段と言えるのかもしれません。過去の出来事を描いた作品は、読者の心に新たな感情を呼び起こし、過去の出来事を現在に蘇らせる力を持っていると言えるでしょう。

コミックへの示唆

本書は哲学書ではありますが、その内容はコミック創作にも多くの示唆を与えてくれます。時間旅行をテーマにした作品や、過去と現在が交錯する物語を描く際には、本書で提示されている時間の不可逆性や相対性といった概念を意識することで、より深く、そして複雑な物語を創造できるでしょう。また、登場人物の記憶や言葉を通して、過去と現在を巧みに繋ぎ合わせることで、より説得力のあるキャラクターやストーリーを生み出すことができるのではないでしょうか。

まとめ

『「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか』は、難解な哲学的概念を平易な言葉で解説した、読み応えのある一冊です。時間という普遍的なテーマを通して、私たち自身の存在や意識について改めて考えさせられる機会を与えてくれます。コミック制作者や、時間という概念に興味のある読者には、特に強くお勧めしたい一冊です。中古本とはいえ、この本に出会えたことは、私にとって幸運だったと言えるでしょう。

上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください

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