【中古】このはな綺譚 3/幻冬舎コミックス/天乃咲哉(コミック) 感想レビュー
天乃咲哉先生の描く、あたたかくも切ない百合ファンタジー「このはな綺譚」、待望の第3巻の読後感を、このレビューでお届けします。中古品ではありますが、手元に届いたその時から、ページをめくるたびに広がる幻想的な世界観に心を奪われました。前巻までの伏線がどう回収され、新たな物語がどのように紡がれていくのか、期待に胸を膨らませて読み始めました。
人間と神々の交錯、そして「愛」という名の感情
第3巻は、主要キャラクターたちの過去や、彼女たちが抱える秘めた想いがより深く掘り下げられる巻となりました。特に、主人公である狐の少女・柚の、人間であった頃の記憶の断片が描かれるシーンは、読者の心を強く揺さぶります。人間としての温かい記憶と、神である「このはな」としての宿命。その狭間で揺れ動く柚の姿は、切なくも美しく、彼女が「愛」という感情をどのように理解し、育んでいくのか、その過程が丁寧に描かれています。
また、柚以外のキャラクターたちにも、それぞれに背負う物語があります。妖怪である猫の少女・皐月や、人間嫌いの鴉天狗・楓。彼女たちの過去の出来事や、人間との関わりが明らかになることで、キャラクターたちの行動原理や感情に、より一層の深みが加わります。それぞれのキャラクターが抱える「寂しさ」や「孤独」といった感情が、人間と神という異なる存在の間に、どのような形で「繋がり」を生み出していくのか。そこには、言葉にならない温かさが確かに存在しました。
繊細な心理描写と、情景描写の美しさ
天乃先生の絵柄は、相変わらず繊細で、キャラクターたちの表情や仕草から、その内面の機微が痛いほど伝わってきます。特に、感情が大きく動くシーンでは、キャラクターの瞳の輝きや、表情の微細な変化によって、その心情が克明に描き出されています。読者は、まるで自分自身がその場面に立ち会っているかのような感覚に陥ります。
そして、この作品のもう一つの魅力は、その圧倒的な情景描写の美しさです。季節の移ろい、自然の風景、そして「このはな」の神々しい姿。それらが、幻想的でありながらも、どこか懐かしさを感じさせるタッチで描かれています。特に、夕暮れ時の神社の描写や、雪降る冬の情景などは、息をのむほどの美しさでした。これらの美しい情景描写が、物語の持つあたたかさや切なさを、より一層引き立てています。
新たな謎と、進展する人間関係
第3巻では、物語の核心に迫る新たな謎も提示されます。柚たちが所属する「このはな」の秘密や、人間世界と神の世界の繋がりについて、読者の好奇心を刺激する展開が用意されています。これらの謎が、今後の物語でどのように解き明かされていくのか、非常に楽しみです。
また、キャラクターたちの人間関係も、さらに深まっていきます。特に、柚と、彼女を取り巻く人々との絆は、より強固なものとなっていきます。互いを思いやり、支え合う姿は、読者の心を温かく包み込みます。時にぶつかり合い、時にすれ違いながらも、お互いを理解しようと努める姿は、まさに「絆」という言葉がふさわしいものでした。
百合の美しさと、成長の物語
「このはな綺譚」は、百合作品としても非常に秀逸です。しかし、単なる恋愛感情にとどまらず、少女たちが互いを認め合い、尊重し合い、共に成長していく姿が描かれています。その過程で生まれる、清らかで、どこか儚げな感情は、読者の胸を締め付けます。
柚が、人間としての記憶と、神としての役割の間で葛藤しながらも、自分自身の「心」と向き合い、成長していく姿は、多くの読者に勇気と感動を与えることでしょう。彼女の純粋な心と、周りの温かい人々との触れ合いが、彼女をどのように変えていくのか、その変化を見守ることができるのは、この作品の大きな魅力の一つです。
まとめ
【中古】このはな綺譚 3/幻冬舎コミックス/天乃咲哉(コミック)は、前巻に引き続き、感動と驚きに満ちた一冊でした。キャラクターたちの心理描写の深さ、情景描写の美しさ、そして、徐々に明らかになる物語の核心。全てが読者の心を捉えて離しません。
温かくも切ない、そしてどこか懐かしい。そんな不思議な感情を呼び起こす「このはな綺譚」の世界に、あなたもぜひ触れてみてください。第3巻は、これまでの物語の集大成とも言える、非常に見応えのある巻です。この作品が好きな方はもちろん、まだ読んだことのない方にも、ぜひ一度手に取っていただきたい作品です。柚たちの紡ぐ、あたたかな物語の続きが、今から待ちきれません。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください


コメント