犬甘兄弟の甘やかな猛愛に注意。 (Clair TLcomics) [ ハナマルオ ] 感想レビュー
ハナマルオ先生の「犬甘兄弟の甘やかな猛愛に注意。」は、まさにタイトル通りの刺激的で、かつ奥深い兄弟愛(?)を描いた作品でした。BL作品に慣れている方でも、その「猛愛」の強烈さに一瞬たじろいでしまうかもしれませんが、読み進めるうちに、その根底にある切なさや、兄弟だからこそ許される(?)独占欲の形に、抗いがたい魅力を感じてしまうことでしょう。本レビューでは、この作品が持つ多層的な魅力を、ネタバレを避けつつ、できるだけ詳細に掘り下げていきたいと思います。
兄弟の複雑な関係性と、そこに芽生える「それ」
物語の中心となるのは、犬甘家の兄弟です。兄である「健吾」と弟である「悠生」。二人の関係性は、一見するとごく普通の兄弟のようでありながら、どこか一線を越えかねない緊迫感を孕んでいます。幼い頃からの積み重ねられた時間、互いを理解しすぎるが故の、そして理解しきれない部分への執着。それが、ある出来事をきっかけに、互いへの愛情とは少し異なる、もっと原始的で、所有欲に近い感情へと変質していきます。この感情の移り変わりが、非常に繊細に、そして時に生々しく描かれているのが本作の大きな特徴です。
健吾の揺るぎない「独占欲」
兄である健吾の悠生への想いは、まさに「猛愛」という言葉にふさわしいものです。悠生のことになると、周囲が見えなくなるほどの集中力と行動力を見せます。それは、悠生を守りたいという純粋な気持ちから来ているのですが、その守り方が、時に相手をがんじがらめにし、息苦しささえ感じさせるほど。しかし、その激しさの裏には、悠生を失ってしまうことへの深い恐れや、自分だけが悠生を理解しているという自負が隠されているように感じられます。健吾の行動原理は、一見理不尽に思えても、彼の心の中では「悠生のため」という揺るぎない大義名分によって正当化されているのです。そのブレのなさが、逆に恐怖を感じさせつつも、彼の愛情の深さを物語っています。
悠生の葛藤と、惹かれていく心
弟である悠生は、健吾の尋常ではない愛情に戸惑い、反発しながらも、次第にその「猛愛」に抗えなくなっていきます。健吾の激しさに怯えながらも、その激しさの中に垣間見える、自分だけを見てくれるという優しさや、自分を一番に考えてくれるという事実に、心の奥底で安堵や喜びを感じているのです。兄という立場を利用した、健吾の強引なアプローチは、悠生にとって理不尽なものでありながら、その愛情の強さゆえに、他の誰にも向けられない特別なものであることを、悠生自身も無意識のうちに感じ取っているのかもしれません。悠生の葛藤は、読者にも共感を呼び、彼の心情の変化に一喜一憂させられます。
「甘やかな」という言葉の真意
タイトルにある「甘やかな」という言葉。これは、単に甘いだけではなく、どこか危うさを孕んだ、中毒性のある甘さを指しているのだと思います。健吾の愛情表現は、時に強引で、独善的ですが、その中に「俺だけのお前」という独占欲の裏返しとしての甘さがあります。悠生が健吾の愛情を受け入れる過程で感じる、背徳感と高揚感。それが、この作品を「甘やか」なものにしています。それは、社会的な常識や倫理観を一時的に忘れさせてしまうほどの、禁断の果実のような甘さです。
ハナマルオ先生の描く「愛」の形
ハナマルオ先生の描く「愛」は、非常にパワフルで、感情の起伏が激しいのが特徴です。本作でも、その持ち味が存分に発揮されています。登場人物たちの感情の機微を、繊細な心理描写と、大胆な行動描写で表現することで、読者は彼らの置かれた状況に没入し、感情移入せずにはいられなくなります。特に、兄弟という近すぎる関係性だからこそ生まれる、複雑な感情のぶつかり合いを、読者に生々しく体験させてくれる手腕は、まさに圧巻です。性的な描写も、単なる刺激のためではなく、登場人物たちの感情の高まりや、関係性の変化を象徴する重要な要素として描かれており、作品全体のテーマ性を深めています。
読後感と、心に残るもの
「犬甘兄弟の甘やかな猛愛に注意。」を読み終えた後、読者は様々な感情を抱くことでしょう。健吾の圧倒的な愛情表現に衝撃を受け、悠生の葛藤に胸を締め付けられ、そして二人の関係性の危うさにドキドキさせられる。しかし、それと同時に、互いを必要とし、互いの存在がなければ成り立たない二人の関係性の、ある種の純粋さにも気づかされるはずです。この作品は、倫理的な境界線を越えた愛の形を描きながらも、その根底にある、人間が持つ根源的な「愛」や「執着」といった感情を、赤裸々に描き出していると言えるでしょう。刺激的でありながらも、どこか心に深く残る、そんな一作でした。
まとめ
「犬甘兄弟の甘やかな猛愛に注意。」は、ハナマルオ先生の真骨頂とも言える、強烈で情熱的な兄弟愛(?)を描いた作品です。その「猛愛」の強さに最初は驚くかもしれませんが、登場人物たちの繊細な心理描写と、複雑な感情のぶつかり合いに、きっとあなたは魅了されるはずです。「甘やか」でありながらも、どこか危うさを孕んだ二人の関係性は、読後に忘れられない余韻を残します。BL作品に新たな刺激を求める方、そして人間ドラマの奥深さに触れたい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。ただし、その「猛愛」の強さには、くれぐれもご注意ください。
上の文章は個人的な感想です。下記サイトで正確な情報をお確かめください

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