【中古】グッデイ/KADOKAWA/須藤真澄(コミック) レビュー
須藤真澄先生の「グッデイ」は、何度読み返しても心に染み入る、温かくも切ない人間ドラマの秀作です。中古市場で手にした一冊ですが、その魅力は購入当時の新鮮な感動そのままに、いや、むしろ時を経て一層深みを増しているように感じられます。
物語の導入と世界観
物語は、主人公の女子高生、ユキが、ひょんなことから「グッデイ」という名の、ちょっと風変わりな喫茶店でアルバイトを始めることから始まります。この喫茶店が、単なる飲食の場ではなく、人生に疲れた人々や、何かを抱えた人々が集まる、不思議な「居場所」として描かれているのが秀逸です。
ユキは、最初は戸惑いながらも、店主である初老の男性、アキラさんの飄々とした、それでいて温かい人柄に触れ、徐々に「グッデイ」の世界に惹き込まれていきます。アキラさんの淹れるコーヒー、そして彼が語る言葉の数々は、訪れる人々の心にそっと寄り添い、忘れかけていた大切なものを思い出させてくれる力を持っています。
個性豊かな登場人物たち
「グッデイ」に集まる人々は、皆一様に個性的で、それぞれの人生の物語を抱えています。
* 常連客のおばあさん:かつては華やかな舞台で活躍していたという彼女。その華やかさの陰に隠された、孤独や諦め。しかし、ユキやアキラさんとの交流の中で、再び輝きを取り戻していく姿が描かれます。
* 売れない小説家:自信を失い、創作意欲も枯渇してしまった彼。アキラさんの言葉に励まされ、再びペンを握るきっかけを見出していきます。
* 過去に傷を負った青年:心に深い闇を抱え、社会との繋がりを断ち切ろうとしている彼。ユキの純粋さや、アキラさんの包容力によって、少しずつ心を開いていく過程は、見ているこちらまで応援したくなります。
これらの登場人物たちが織りなす人間模様は、決して大袈裟な出来事や劇的な展開ではなく、日々の生活の中に潜む、ささやかな喜びや悲しみ、そして希望を描いています。だからこそ、読者は共感し、自分自身の人生と重ね合わせてしまうのです。
絵柄と雰囲気
須藤真澄先生の描く絵柄は、繊細でありながらも力強く、登場人物たちの感情の機微を的確に表現しています。特に、ユキの純粋な瞳、アキラさんの穏やかな微笑み、そして「グッデイ」という喫茶店の温かい雰囲気は、絵を通して読者の五感に訴えかけてきます。
色彩も、派手さはありませんが、どこか懐かしさを感じさせるような、落ち着いたトーンで統一されており、物語全体の持つノスタルジックな雰囲気を高めています。ページをめくるたびに、まるで自分も「グッデイ」の片隅に座っているような、そんな温かい感覚に包まれます。
「グッデイ」に込められたメッセージ
「グッデイ」というタイトルに込められた意味は、物語を読み進めるうちに、いくつもの解釈が生まれてきます。「今日一日が良い日になりますように」というシンプルな願い。しかし、それは同時に、過去の出来事や未来への不安に囚われず、「今、この瞬間」を大切に生きることへの肯定でもあるように感じました。
また、アキラさんがユキに語る言葉の中に、「どんな時も、誰かの『グッデイ』になれることがある」というようなニュアンスが含まれていたように記憶しています。それは、自分自身が誰かにとっての支えになれる、という希望であり、同時に、自分自身もまた、誰かから支えられている、という感謝の念でもあります。
読後感
「グッデイ」を読み終えた後、胸の中に広がるのは、穏やかな幸福感と、ほんの少しの切なさです。登場人物たちがそれぞれの人生を歩んでいく姿を見送った後、自分自身の日常に戻った時、ふとした瞬間に「グッデイ」の温かい世界を思い出し、心が軽くなるのを感じます。
この作品は、人生の苦悩や葛藤を抱えながらも、それでも前を向いて生きていこうとする人々の姿を、優しく、そして力強く描いています。人生に疲れた時、迷った時、そっと手に取りたくなる、そんな「心のオアシス」のような漫画です。
まとめ
「グッデイ」は、須藤真澄先生の人間への深い愛情と、繊細な感性が惜しみなく注ぎ込まれた、珠玉の人間ドラマです。中古で手に入れた一冊ですが、その価値は新品以上と言っても過言ではありません。何度読んでも新しい発見があり、読むたびに心が洗われるような、そんな不思議な魅力に満ちています。
温かい人間ドラマをお探しの方、人生に迷った時の道しるべを求めている方、そして何よりも、心温まる物語に触れたい方には、ぜひ一度手に取っていただきたい作品です。この「グッデイ」が、あなたの人生にとっても、ささやかな「グッデイ」をもたらしてくれることを願っています。
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