『結婚は墓場かゴールかロマンスか 1』感想レビュー
作品概要と第一印象
講談社から刊行されている、はるこ(美波はるこ)先生による「結婚は墓場かゴールかロマンスか」の第1巻。中古品ですが、手元に届いてすぐにページをめくりました。帯には「共感必至!アラサー女子のリアルな結婚観」といったキャッチコピーが踊っており、手に取る前から「これは私のことかもしれない」という期待感で胸がいっぱいになりました。
表紙のイラストも、どこか親しみやすく、そして少し疲れたような、でも諦めていないような表情の主人公が印象的です。この第一印象は、読み進めるうちに確信へと変わっていきました。
主人公の「リアル」に共感
物語は、主人公である30歳目前の女性、高橋(仮名)の視点から描かれます。彼女は、長年付き合っていた彼氏からのプロポーズを、なぜか素直に喜べない自分に戸惑っています。結婚という一大イベントに対して、「本当にこの人でいいのだろうか?」「この先、ずっと一緒にいて幸せになれるのだろうか?」といった、多くの女性が一度は抱くであろう素朴な疑問や不安が、彼女の心に渦巻いています。
この「素直に喜べない」という感情が、非常にリアルで共感を呼びます。世間一般で「幸せなこと」とされる結婚に対して、ネガティブな感情を抱くことに罪悪感を感じる主人公の葛藤は、読んでいるこちらも「わかるわかる!」と頷いてしまうほど。特に、周囲の友人たちが次々と結婚していく様子や、親からのプレッシャーなどが、彼女の焦燥感をさらに掻き立てる描写は、まさに現代社会におけるアラサー女性の等身大の姿を描いていると言えるでしょう。
友人との会話に垣間見える多様な価値観
主人公が親しい友人たちと繰り広げる会話も、この作品の魅力の一つです。友人たちの中には、結婚に対して楽観的な考えを持っている人もいれば、主人公と同じように迷いや不安を抱えている人もいます。また、「結婚なんてコスパが悪い」「自由がなくなるのが怖い」といった、率直な意見を口にする友人とのやり取りは、読者に結婚に対する多様な価値観があることを改めて認識させます。
「結婚は墓場」「結婚はゴール」「結婚はロマンス」といった、作品タイトルにもなっているように、人によって結婚に対する捉え方は千差万別です。そして、そのどれもが間違いではなく、それぞれの人生における選択肢の一つであることが、自然な形で描かれています。
ユーモアと切なさのバランス
物語は、決して重苦しいだけの展開ではありません。主人公の心の声や、彼女を取り巻く人間関係の中で生まれる、クスッと笑えるようなユーモラスなシーンも随所に散りばめられています。特に、主人公の恋愛に対する奮闘ぶりや、ちょっとした勘違いなどがコミカルに描かれており、読後感を軽やかにしてくれる効果があります。
しかし、そのユーモアの裏には、常に主人公の切実な悩みや、人生の岐路に立った時の孤独感が垣間見えます。結婚という大きな決断を前に、誰しもが抱えるであろう不安や、自分自身の人生をどう生きていくかという問いが、巧みに織り交ぜられています。このユーモアと切なさの絶妙なバランスが、読者を引きつけ、物語に深みを与えています。
絵柄とキャラクターデザイン
はるこ先生の絵柄も、この作品の魅力を高める重要な要素です。キャラクターたちは、親しみやすいタッチで描かれており、表情の機微が豊かに表現されています。特に、主人公の感情の揺れ動きが、表情や仕草を通して丁寧に描かれており、読者は彼女に感情移入しやすくなっています。
また、登場人物たちのファッションや、生活空間の描写も、現代的でおしゃれな雰囲気を醸し出しています。どこか「自分にもありそう」と思えるような、リアルな日常が描かれているため、より物語の世界に入り込みやすいと感じました。
今後の展開への期待
第1巻は、主人公が結婚について悩み、自分なりの答えを見つけようと模索し始める序章と言えるでしょう。長年の彼氏との関係、友人たちの結婚、そして自分自身の将来…。様々な要素が絡み合い、主人公の人生がどのように展開していくのか、非常に気になります。
この作品は、結婚を控えている人、結婚に悩んでいる人、そしてすでに結婚している人…どのような読者層にも響く普遍的なテーマを扱っています。自分自身の経験や、周りの人々の人生と重ね合わせながら、主人公の成長を見守っていきたいと思わせる、そんな力を持った第1巻でした。
まとめ
「結婚は墓場かゴールかロマンスか 1」は、アラサー女性のリアルな結婚観を、ユーモアと切なさを交えながら巧みに描いた作品です。主人公の葛藤や、友人たちとの会話を通して、結婚に対する多様な価値観が提示されており、読者は自身の人生観を重ね合わせながら、共感し、考えさせられることでしょう。はるこ先生の温かい絵柄と、丁寧な心理描写も相まって、今後の展開がますます楽しみになる一冊です。結婚という人生の大きなイベントについて、真剣に、そして時には軽やかに向き合いたいと考えている方には、ぜひ手に取っていただきたい作品だと感じました。
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