IllustratorアセットをAffinity Designerへ書き出す
Illustratorで作成したアセットをAffinity Designerで活用したい、というニーズは少なくありません。これらのソフトウェアはそれぞれ独自のファイル形式を持っていますが、いくつかの方法で互換性を確保し、作業を円滑に進めることができます。ここでは、IllustratorのアセットをAffinity Designerへ書き出すための具体的な手順と、それに関連する考慮事項を詳しく解説します。
Illustratorアセットとは
Illustratorにおける「アセット」とは、再利用可能なグラフィック要素の集合体を指します。これには、ロゴ、アイコン、イラスト、パターン、ブラシ、カラーテーマなどが含まれます。Illustratorの「ライブラリ」機能や、「アセットの書き出し」機能を利用することで、これらのアセットを効率的に管理し、他のプロジェクトや異なるアプリケーションで利用することが可能になります。
書き出し方法の選択肢
IllustratorからAffinity Designerへアセットを移行するには、主に以下の方法が考えられます。
1. SVG (Scalable Vector Graphics) 形式での書き出し
SVGは、ベクターグラフィックを表現するためのXMLベースのファイル形式です。IllustratorとAffinity Designerの両方でサポートされており、ベクター情報をそのまま保持できるため、最も推奨される方法の一つです。
手順:
- Illustratorで、書き出したいアセットを含むアートボードまたはオブジェクトを選択します。
- ファイルメニューから書き出し > 書き出し形式…を選択します。
- フォーマットドロップダウンメニューからSVG (*.SVG)を選択します。
- 書き出しボタンをクリックします。
- SVGオプションダイアログが表示されるので、必要に応じて設定を調整します。
- 画像的位置: 「CSSプロパティ」または「プレゼンテーション属性」を選択します。一般的には「プレゼンテーション属性」が互換性が高いとされています。
- フォント: 「アウトラインを作成」を選択すると、フォント情報がパスデータに変換され、フォントがインストールされていない環境でも正しく表示されます。ただし、テキスト編集はできなくなります。
- CSSプロパティ: 「プレゼンテーション属性」が互換性の観点から推奨されます。
- OKをクリックしてSVGファイルを保存します。
- Affinity Designerで、ファイルメニューから開くを選択し、保存したSVGファイルをインポートします。
注意点:
- 複雑なグラデーションや一部の特殊効果は、SVGに変換される際に意図した通りに表示されない可能性があります。
- フォントをアウトライン化しない場合、Affinity Designer側でそのフォントが利用可能である必要があります。
2. PDF (Portable Document Format) 形式での書き出し
PDFもまた、IllustratorとAffinity Designerの両方でサポートされている汎用的なファイル形式です。ベクター情報とラスター情報を保持できるため、アセットの種類によっては有効な選択肢となります。
手順:
- Illustratorで、書き出したいアセットを選択します。
- ファイルメニューから保存または別名で保存を選択します。
- フォーマットドロップダウンメニューからAdobe PDF (*.PDF)を選択します。
- 保存ボタンをクリックします。
- PDFオプションダイアログが表示されるので、必要に応じて設定を調整します。
- 互換性: 最新のバージョンを選択すると、より多くの機能がサポートされます。
- 圧縮: 画像が含まれる場合、適切な圧縮率を設定します。
- オプション: 「Illustratorの編集機能を保持」にチェックを入れると、Illustratorで再編集可能ですが、ファイルサイズが大きくなることがあります。Affinity Designerでの再編集を主目的とする場合は、このオプションは必須ではありません。
- PDFを保存をクリックします。
- Affinity Designerで、ファイルメニューから開くを選択し、保存したPDFファイルをインポートします。
注意点:
- PDFはIllustratorのネイティブ機能との互換性が最も高い形式の一つですが、Affinity Designerで開いた際に、一部のレイヤー構造や効果が保持されない場合があります。
- PDFはベクターデータだけでなく、画像データも含むことができるため、ファイルサイズが大きくなる傾向があります。
3. EPS (Encapsulated PostScript) 形式での書き出し
EPSは、PostScript言語に基づいたグラフィックファイル形式で、ベクターグラフィックの交換によく利用されます。Affinity DesignerでもEPSファイルのインポートは可能ですが、SVGやPDFほどの互換性はない可能性があります。
手順:
- Illustratorで、書き出したいアセットを選択します。
- ファイルメニューから書き出し > 書き出し形式…を選択します。
- フォーマットドロップダウンメニューからPhotoshop EPS (*.EPS)を選択します。
- 書き出しボタンをクリックします。
- EPSオプションダイアログが表示されるので、設定を調整します。
- 形式: 「プレビュー形式」では、グリッド表示用のラスタライズされた画像が埋め込まれます。「PostScriptレベル」は、互換性を考慮して選択します。
- フォントの埋め込み: 「アウトラインを作成」を選択すると、フォント情報がパスデータに変換されます。
- OKをクリックしてEPSファイルを保存します。
- Affinity Designerで、ファイルメニューから開くを選択し、保存したEPSファイルをインポートします。
注意点:
- EPSは古い形式であり、最新のグラフィック機能のサポートが限定的です。
- Affinity DesignerでのEPSのインポートは、SVGやPDFに比べて問題が発生する可能性がやや高くなります。
Illustratorアセットパネルからの直接的な書き出し(限定的)
Illustratorの「アセットの書き出し」機能(ファイル > アセットの書き出し)は、主に画像形式(PNG, JPG, SVG, PDF)での書き出しをサポートしています。この機能を利用してSVGまたはPDFで書き出すことで、Affinity Designerで利用可能な形式でアセットをエクスポートできます。
手順:
- Illustratorの「アセットの書き出し」パネルを開きます(ウィンドウ > アセットの書き出し)。
- 書き出したいアセットをパネルにドラッグ&ドロップするか、既存のアセットを選択します。
- 書き出しボタンをクリックします。
- フォーマットとしてSVGまたはPDFを選択します。
- 書き出しボタンをクリックし、保存場所を指定します。
注意点:
- この機能は、個々のアートボードや選択したオブジェクトをアセットとして扱います。Illustratorのライブラリ全体を一度にエクスポートする機能とは異なります。
- SVGまたはPDF形式で書き出した場合、Affinity Designerでインポートして利用できます。
Affinity Designerでのインポートと注意点
Affinity DesignerでIllustratorから書き出したアセットをインポートする際の注意点もいくつかあります。
- レイヤー構造: Illustratorでの複雑なレイヤー構造は、Affinity Designerで完全に再現されない場合があります。インポート後に、必要に応じてレイヤーの整理や再構築が必要になることがあります。
- 文字のアウトライン化: 前述の通り、SVGやEPSでフォントをアウトライン化しておくと、フォントの互換性の問題を回避できます。ただし、テキストとしての編集はできなくなります。
- 効果とグラデーション: Illustrator独自の複雑な効果やグラデーションは、他の形式に変換される際に、Affinity Designerで意図した通りに表示されない可能性があります。Affinity Designerで再調整が必要になる場合もあります。
- カラープロファイル: 作業中のカラープロファイルが統一されていることを確認してください。異なるカラープロファイル間で作業すると、色の再現性に差異が生じることがあります。
- オブジェクトの結合: Illustratorで複数のオブジェクトがグループ化されている場合、Affinity Designerでインポートされる際に、一部のオブジェクトが結合されたり、パスが複雑になったりすることがあります。
まとめ
IllustratorのアセットをAffinity Designerへ書き出す最も一般的で推奨される方法は、SVG形式での保存です。これにより、ベクター情報を可能な限り忠実に移行できます。次点でPDF形式も有効な選択肢です。
書き出し時には、フォントのアウトライン化、画像の位置、CSSプロパティなどの設定を適切に選択することが重要です。また、Affinity Designerでインポートした後は、レイヤー構造、効果、グラデーションなどの互換性を確認し、必要に応じて微調整を行うことが、スムーズなワークフローの鍵となります。これらの手順と注意点を理解することで、Illustratorで作成した貴重なアセットをAffinity Designerで効果的に再利用し、デザイン制作の効率を高めることができるでしょう。

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